貧乏な男が、金持ち生活をした末路(2)

男は、遠い国についた。


ドライバーは、黒いトヨタ・ランドクルーザーで迎えにきた。
室内は光沢のある木調仕上げ、本革シート。


市内の自宅に到着した。
敷地は高い壁で囲まれていて、入口には守衛所で2人の
警備員が常駐している。

60階建てのタワーマンションだが、建築の法律の違いか、
近未来的な外観、8階まで吹き抜けになっている
エントランスのカウンターに若い女性がいて、現地語でようこそとあいさつした。

部屋は上層階にあり、重い玄関をあけると、備え付けのモダンな家具がおかれ、
窓は床から高い天井まで一面に貼られていて、市内の高層ビル群の先っぽがならび、
下をのぞくと、いくつもの建物の屋上にある空調の室外機のファンがぐるぐるしている。
ハハハ、人がゴミのようだ。

メイドさんが週に3日、掃除をしてくれる。
ドライバーは平日休日とわず待機していて、電話一本でエントランスに車を寄せてくれるし、
行先はオフィスでも、ゴルフ場でもコンビニでもどこでも指定できる。もちろん、タダだ。

これは日本でいくらくらいかかるのか?

家賃:45万円/月 
メイドサービス:5万円/月(週3だし)
ランクル:20万円/月 (駐車・維持・燃料費含む。3年で買い替えられる)
ドライバー:50万円/月
合計:120万円くらい。

日本ではメイドはもちろん、車もボロい軽と変わらないから、
家賃含めて、10万円/月もいらない。
だから、プラス110万円/月くらい。年にして1320万円くらい豪華になった計算だ。

なにより重要なことは、この費用は会社が負担するということだ。
それまでの給料は減らない、むしろけっこう増える。
そのかわり、バスで会社にいくしもっとふつうの家でいいから、1320万円もらえるか、
というとそれはできない。この金持ち生活を、半ば強制されているようなものだ。

男はまだ20代中盤だった。成功したベンチャー創業者にでもなった気分だった。

(つづく)